認知症病棟が舞台のお芝居。原作は、帚木蓬生さんの同名の小説。
認知症病棟に入院する患者さんの自分語りと、病棟での日常生活が流れていく。
家族に認知症を患った者がいないのだが、そんな私にもリアルに感じられた。
エピソードもそうだけれど、全員の振る舞いが、演技と思えないほどだった。
テーマは、認知症における終末期医療。そして尊厳死。
海外では、安楽死をみとめている国もあるが、深く考えたことはなかった。
日本では、消極的安楽死(=延命治療を行わない、中断すること)は合法だが
積極的安楽死(=致死量の投薬を行うこと)は違法だ。
劇中に、積極的安楽死と消極的安楽死について問いかける場面がある。
例えば自発呼吸ができない患者の場合、人口呼吸器を付けることで生かされる。
消極的安楽死は、人工呼吸器を外すこと。すなわち窒息死。
積極的安楽死は、モルヒネ等を致死量投薬することで、眠るように逝ける。
患者にとってどちらが良いだろうか?と。
私自身は漠然と、人の世話になるくらいならいっそ、と考えているが
では自分以外の家族が積極的安楽死を希望するなら同意するか?と問われれば、
その時になってみないとわからないけれど、生きられるのならば、生きていて
ほしいと言うかもしれない。勝手なもんだ。
医療の発達によって、たくさんの命を救えるようになった。
それは純粋に良いことだと思うけれど、同じだけ、死についても考えなければ。
高齢化社会が進む日本、いつか安楽死が合法化されるのだろうか。
余談。オーストラリアでは「Sarco(サルコ)」という自殺幇助マシンが発表
されたそうだが、日本での導入はないな。そのまま棺として利用するらしいし。
◆出演
児玉謙次、名取幸政、山野史人、永幡洋、長克巳、嶋崎伸夫、堀部隆一、
石母田史朗、鹿野宗健、岩倉高子、阪上和子、藤夏子、山本与志恵、吉本選江、
五味多恵子、野沢由香里、津田真澄、小暮智美、井口恭子、世奈、橋本菜摘