2018年5月5日土曜日

1984@新国立劇場

小説では読んでいた1984年。
1年前に、お芝居として上演されると知ってからずーっと心待ちにしていたのだ。


舞台上手の机でノートを広げ、ペンを持つウィンストン・スミス氏、スクリーンにはその手元が映し出されている。
テレスクリーンに隠れて日記を書こうとするあのシーン。
文字で読んでいたものが映像化されていることにまず感動する。

そのまま、1984年のまま展開していくかと思いきや、途中で過去と未来を行き来するような構成になっていた。
途中に1984年という小説について、ディスカッションをしている風景が挟まる。

後でパンフレットを読んで意味が分かった。
小説版の1984年では、巻末に付録としてニュースピークの解説が載っている。
2050年以降に書かれたとされるそれは、1984年という時代を振り返って分析、解説している。
つまり1984年本編は劇中劇ともいえるということ。

何と残念なことに、「付録」の部分を読んでいなかった私。。何ともったいない。
しかし続きを読めると思えば。別角度から見られる楽しみがひとつ増えたということで良しとしよう。

(舞台を観なければずっと気づかなかったかもしれない。いや、だいぶ後になって再読して、ようやくトリックに気付いたかもしれない。それはそれでおもしろそうだけど。)


101号室の描写、血のりがリアルで目を覆いたくなるくらいだったが、一番苦しかったのは迫ってくる舞台で、
時計仕掛けのオレンジみたいに無理やり目を開けられて見せられているような感じだった。


オブライエン役として大杉連さんが起用されていたが、今年2月に隣接次元に漏れてしまった。合掌。



◆出演
井上芳雄 ともさかりえ 森下能幸 宮地雅子 山口翔悟 神農直隆 武子太郎 曽我部洋士 堀元宗一朗青沼くるみ 下澤実礼 本多明鈴日








煙が目にしみる@本多劇場

待合室のようなところに白装束の男性が二人。
会話の内容から、二人はこれから火葬されようとする故人(幽霊)であることがわかる。
偶然同じ斎場となった二人の故人と、その家族のお話。
加藤健一さん演じる桂おばあちゃんがイタコとなって、故人の思いを家族に伝える。

(……こう書くとストーリーを誤解されてしまいそうだ。)
少しボケが入ってきた、ゴシップ好きのお節介おばあちゃんにだけ幽霊の姿が見えるという設定から、
深刻さを笑いに変えながら、テンポよく進行していく。
最後はしっかりと泣かせ、観終わった後は晴れ晴れとして、あたたかい気持ちになるお芝居だった。

本筋とは別に、劇中の細かい設定がお葬式あるあるで、親族あるあるで、どこも一緒だなあと苦笑。
反抗期の娘、帰ってこない息子、父の彼女、発注ミスのお弁当、クセの強い親戚、、、
一見すると必要なさそうな設定がよりリアルに見せるのでしょうね。

家族だからこそ素直になれないことやひみつにしておきたいことはたくさんある。
だからほんとうの生活は誤解ばかりなのかもしれない。
気持ちを伝えたくても、死んでしまってからではもう遅い。でも伝えたい。
そんな希望を代弁してくれるから、このお話が愛されるのだろうと思いました。

今回の公演は13年ぶりの再演だそう。
13年前の公演を観た先輩に教えられて観劇した。
私のはじめての「再演観劇」は、次回公演の花組芝居「天守物語」になりそうだ。


◆出演
加藤健一 / 山本郁子 / 天宮良 / 加藤忍 / 伊東由美子 / 佐伯太輔 / 菊地美香 / 伊原農 / 久留飛雄己 / 吉田芽吹 / 照屋実 / 新井康弘