もう30分経っちゃったんですね。
じゃあここでちょっとFUJI ROCK関係の質問にお答えしましょうか。
いくつかFUJI ROCK関係のお答えしていきます。
まず、気になるのがあったんだなあ。これ最初に答えちゃいましょうかね。
FUJI ROCKだけではないと思いますが、「夢みる機械」の盛り上がり、サビの部分のパフォーマンスは見ようによってはネオナ○のそれを連想させるようにも思えましたが、平沢さんは予測としてどのようなリアクションが返ってくるだろうか、とかございましたでしょうか。
これはね、あのネオ○チでもナ○でもどちらでもいいんですが、こう言われるとは思ってもみませんでした。
例えば、私がステージの上でこうやりますね(ライフル銃を構えるジェスチャー)。
こうやった時に、人は「ヒラサワは人殺しをステージの上で奨励した」と言うんでしょうか。
それからこれも同じですね。例えばこんなこと(ハンドガンの引き金を引くジェスチャー)やったりしたら「あ、ヒラサワは人殺しを奨励している」と。これ言わないですね。
ところがなぜこういうふうにやると(エントロピーポーズ)、ネオナ○、あるいはナ○スドイツ、あるいはヒッ○ラーを連想すると言われるのか。
これは、よく考えてください。他のジェスチャーで、他のポーズでそういうことは言われないと思います。
今言ったように、こうして私が人を殺す形をしてさえ、誰もヒラサワ人殺しを奨励しているというふうな反応を引き出すような条件付けはされていないはずです。
つまり誰にも条件付けされていないとそういう素直な反応になるわけですね。
ところがこう(エントロピーポーズ)やるとネオ○チ、あるいはヒッ○ラー、あるいはナ○スドイツと言われる、なぜここだけこう言われるようになったのかというのを、感心がある方は自分で調べてください。
私は言いませんけれども、感心があるなら自分で調べてください。
ただし普通に歴史を辿ったんではわかりません。世界を一枚二枚剥がしてください。
以上です。
それから次の質問ですね……今のあれでちょっと世話役がハラハラしたと思いますんで、すぐ他の質問に行きます。
FUJI ROCKは野外でのライブでしたが、いつもの屋内ライブと違って、音響の面など色々勝手はかなり変わるのでしょうか。
はい。もちろん会場が変われば勝手は変わります。
例えば今回はゲネプロと言って、ライブと全く同じ状態、PAもモニタも全部同じセットを組んで、全てバランスを整えてそれをそのままそーっと会場に持っていくということをしています。
ですから全く同じに再現されるはずなんですが、そうはいきません。
もちろんその物理的な条件、会場の広さとか観客の数とかこういうのを全部なくしてしまって、回線の中で起こっている出来事として見るならば、全く同じなんですけれども、そうした物理的な諸条件によって鳴り方や聞こえ方が全く変わってしまいますので、その後現場で調整が必要となってきます。
それから、昔はモニタというものを、ステージの上では生のスピーカーからアーティストは聞いて演奏したわけですけれども、私の場合はすべてイヤフォーンで聴きます。
ですから会場がどうあれ、リハーサルと同じ状態で聴けるんですね。
ということでこのモニタに関しては比較的安定的にリハと同じような状況で聴けますが、それでもまだ調整が必要な局面というのは出てきます。
前のBSPで舞台装置は中井さんが手掛けると仰っていましたが、FUJI ROCKでのバックの映像は、平沢さんからコンセプトを出されそれに合わせて作られたものなのか、それともブリッジやアレンジから中井さん独自に作られたものなのでしょうか。
これはですね、中井さんです。
例えばステージで映像を使うということについて、よくある、例えばVJとか見てると結局みな同じに見えてしまう。
そうではなくてもう少し、映像家というよりもデザイナー的な立場から映像を構築するとどうなるかっていうのが非常に興味があったのと、それから中井さんのデザインセンスというのは昔から高く評価していたし、それから中井さんが自分の楽曲に付けている映像も非常に良いものがあるので、中井さんにお任せしてやってもらいました。
非常にシンプルで良いものだったと思います。
平沢師匠がおいでになると知り、勇気を出して、もう若くないのですが
あのね、こういうことは言わないほうがいいですよ。
気になるのが、師匠はご自分のステージにかかわる以外の時間、苗場でどのように過ごしていらしたのでしょうか。
あのね、「もう若くない」とか言うのやめましょう。それは自分で決めてください。
質問ですが、例えばね、意外とライブの現場というのは時間がかかるもんなんです。
例えば朝早く入って出番のある夕方まで何もやることがないかというと、そうでもなくて、サウンドチェックとか、それからリハーサルとか、何かにつけあるんですよ。
ですからかなり早い時間から会場にいつも入っていなくてはいけなくて、かといって何もやらない時間も長いんですね。
だけども何かまとまったことをやるには短いということで、割とダラッとしてますね。
ダラッとしているか、みんなは何か食べたりとかですね、それからお茶飲んだりとか、そういうことをして過ごしています。
また、会人はちょっと元気が良かったので、元気が良いので、会人の独りは他のアーティストのライブを観に行ったりしていました。
私はちょっとそれは控えました。
FUJI ROCKで演奏されたアレンジは、今後 映像化、もしくはテスラカイトショップで配信、販売される可能性はありますか。
可能性としてはあります。
ただ、まだ具体的に決まってはいませんが、私が新たにアレンジしたものや、そういうものについては公開するようになると思います。
似たような質問でDVD化、FUJI ROCKは映像として販売されないのかという質問もあったと思うんですがこれはFUJI ROCK側が出すと言わない限りあり得ません。
あれは我々の仕切りじゃないので、そこは単独で出すということは不可能に近いです。
会人が使っていたテスラコイルの演奏楽器の仕組みを教えてください。
あと、あれに名前はありますか。
あれはですね、テスラ放電の装置なんですが、電子楽器を演奏するための約束事っていうか信号の中に音程の命令を出す信号というものがありまして、鍵盤やFUJI ROCKで会人が使っていたパッドですね。ボタンがいっぱい並んだパッド。
あそこから、専門的にはノート・ナンバー……じゃなくて何だっけ、忘れちゃった。
ま、要するにドの音を出せミの音を出せという命令を出すわけです。
そうすると、それに合わせてテスラコイルは放電電圧を変えて、例えばドの音を出せと言ったらその信号を受けて自分で放電電圧を変えて音として演奏されるようになります。
で、あれに名前はないのかと言う質問ですが、あれは私のオリジナルではなく、アメリカ人が作ったものを売ってもらったんですね。
その時確かゼウサホーン(zeusaphone)というふうにして、youtubeか何かで公開されていたと思います。
以上です。
BATTLESのほう質問少なかったんで、もうちょっと行きましょうか。
吹奏楽部の後輩に、今回のFUJI ROCKの師匠のライブ映像を見せたところドン引きされました。
ここで師匠のことを知らない赤の他人に師匠の楽曲を聞かせるとしたら、アディオスあたりが有効なのでしょうか。
個人的にこの曲から始めさせたら落ちるよと言える曲を教えてください。
それはございません。ていうか勧めないでください。
音楽というのはその人の感受性ができるに至るその履歴も含めて、初めて出会ったときに良い悪いが判断できるようなバックボーンができていた上反応するものですから、もし、ヒラサワの音楽に自然に出会って良いと思えないなら、無理やりに勧めないでください。
例えば私は外に出てBGMでJ-POPが流れていると非常に不愉快になります。
大嫌いだからです。大嫌いだし、キモチワルイですそもそも。
あんな上っ面、上辺だけの作文のような言葉を並べたものをいい大人たちが寄ってたかって作って、しかも商品化して、それを買う人がいるというのが今でも信じられません。
それで、ああいうものを私に勧められたら完全に拒否いたします。
ですから、そう言うのを好む人にとっても私の音楽はキモチワルイと思いますので、無理に進めないでください。
ということで、じゃ、ここまででFUJI ROCKを終わりにします。
次はBATTLESですね。
44'13" BATTLESについて
私がなぜBATTLESを知ったかというと、つい最近なんですね。
BATTLESを見つける経緯を実はtwitterでも公開しているんですけれども、これもつい最近です。ギターを高い位置に抱えるアーティストを探してたんです。
ギターというと、割と低い位置に構えるのがかっこいいと。
より低く構えるのがかっこいいとされてた時代は、つまりそれはギターの何たるか。
不良とかだらしないとか、あるいは何だろ、そういうロックに得てして投影されがちな、そういうイメージ。それはもう終わってるよなぁと思って。
例えばニューウェーブが出てきたときに、その前はみんな長髪で、ギターも独特の、まあ今ではみんなまたやり始めちゃってますけれども、ひねり出すようなチョーキングをするギター奏法っていうのが主流で、長髪でって言う時代から、突然ニューウェーブに切り替わったときに、みんな髪を切って。
スパイクヘアみたいになって、ギターもちゃんと弾かないみたいな、ゲームチェンジみたいなものがあったんですけれども、そういうのはあるだろうなと思いながら、そのバロメーターがギターを構える高さにもあるんじゃないかというふうに考えて、なんか上の方に持ってかっこいいアーティストいないだろうかと思って探していたとこに見つけたのがBATTLESです。
極端に上のほうに構えているのがめちゃくちゃかっこいいなと思いました。
まずBATTLESのようなスタイルというのは、実はありそうでなかったんですよね。
BATTLESに対する論評は、後で時間があったら話しますけれども、そういうことを含めて非常に新しいスタイルで、新しい姿勢のギタリスト、あるいはギタリストですらないみたいなものを感じまして、「この人たちすごいかっこいいわ」と思っている矢先に「BATTLES来るよー」みたいなことになって、あれよあれよという流れで前座をやらせてもらうということになった次第であります。
で、最初は情報が色々錯綜していまして、東京だけとかいうことだったんですが、そのうち全部前座をやらせてもらえるということになって、今回のような3か所一緒に回るという結果になった次第です。
それでさっきもお話しましたが、FUJI ROCKとBATTLESとでは同じ編成にしようと思いまして、むしろBATTLES対応でドラマーを探していたわけですが、ドラマーがついに見つかんない状態でテスラコイルをそこに置いた結果、FUJI ROCKでは成功したものの、BATTLESで回る会場とか、BATTLESの臨場感を考えた結果、やはりドラマーが不可欠だと思いまして、急遽またドラマーを探すことになりました。
それでまたyoutubeで探すんですが、いくら探してもこれだというドラマーがいなくて、ある時、どっかアジアの……たぶん韓国か台湾ですね、女性の女の子が路上でめちゃ上手いドラムを叩くというのがあって、そこから路上パフォーマンス……もう検索言語は日本語ではなくなっていて、路上パフォーマンスみたいなモノの繋がりでずーっと見てったら、何と地下鉄の中でドラム叩いてる奴がいると。よく見たら「これもしかして日本人じゃねぇか」と。「コイツ読んでこい」みたいな話になりまして、さっそく連絡を取ったのが、ユージ・レルレ・カワグチです。
それで、その時にさっきも申し上げましたように私は「あまりドラマードラマーしたドラマーじゃない」「ドラマーであること以前にその後ろに何があるのかというのがうっすらとでもいいから見える人」ということで探していたんですが、もう地下鉄でドラム叩く人といえば、ドラマー以前の姿勢というか、「この人はどういうドラマーですか」と言われたときに、「プレイがこうで」というのではなく、「地下鉄でドラムを叩く人」といえるような、こういう人を探していたんですね。
地下鉄に限りませんよ、たまたま彼が地下鉄で叩いていたということで。
ということで、彼に連絡を取りまして、「これこれこういうことでお願いできませんか」と言ったら快くお受けしていただいて、軽く2日間から3日間ぐらいリハーサルをやって、「全然これはいける」ということで、本番前のゲネプロですべてを固めて、BATTLESのツアーに臨んだということでした。
FUJI ROCK同様BATTLESも前座ですから、「拒絶されることはあり得るな」と思っていました。ただ不安はそんなに無かったですね。なぜかというと前座ですから。望んで前座になったわけですから、これもう拒絶されようが何しようが前座は前座ですので、どってことないと。
ま、それもそうなんですけど万が一、とてもウケてしまうのは良くないとは感じていました。つまりFUJI ROCKの騒ぎの後だったんで、噂だけで行ってドカーンと行ってはまずいなというのは感じていて、ま、そんなには心配はしていませんけども。もちろんBATTLESを目当てに来ている方々たちですから、ヒラサワが出ていったからといって、「フーン」みたいな感じになっても当たり前だと思っていますんで。
ただ万が一、FUJI ROCKの騒ぎ・情報によって、多大な期待のためにドカーンと来たらまずいなということで、一曲目を「死のない男」にするという。まず、はぐらかしながらバトルズファンには恐らく好みの範疇だろうと思われるような選曲という意味で、一曲目が「死のない男」でした。
その先やっぱりあまりドカーンと行かないように、そのままそっくりステージをBATTLESに渡して、BATTLESでバーンといくような、曲の配列を考えておりました。
それは、もちろんお客さんたちも大人ですので、その辺はわきまえてくださっていたと思います。BATTLESのときにバーンと行ってくれて……つまりこれは私のファンの人たちのことですよ。例えば……イヤ、これはいいや笑
ま、あの、狙い通りというか、願った通りバトルズが快く演奏ができて、BATTLESファンのみなさんも、よりよいライブ空間を共有できたと。
でBATTLESは最後に一緒に写真を撮り……あ、一緒に写真撮りました。撮ったときに
「これファンクラブのマガジンで使っていい?」っつったら「もちろんだ」っつって、
「じゃあまた日本に来てくれるか」ったら「もちろん来るよ」と、そう言ってくれたんで、「我々の役目はこれで終わりだな」と、そのように感じて、帰路に、帰りの新幹線に乗り、品川に着いたら人身事故で、つくば方面には電車が出ていないと。いつ復旧するかわからないと。
もうまったく名古屋から来て疲れて早くうちに帰りたいのに品川で足止めぁと思いながら、沖縄でレンタカー慣れしている私はですね、即座にレンタカー屋のアプリを出しまして、近くのレンタカー屋を検索しまして、見事レンタカーを借りて、あろるの館に、その日のうちに帰宅することができました。
以上でBATTLESの物語はお仕舞いです。
55'06" BATTLES関連質問コーナー
あと5分ですね。
じゃああと残り5分でBATTLES関係の質問にお答えしましょう。
戦法STSのセットリストはP-MODELとソロの曲で構成されていましたが、選曲はみなさんで決められたのでしょうか。
また、「死のない男」を1曲目にされた理由を教えてください。
選曲は私一人で行いましたし、「死のない男」を1曲目に持ってきた理由は今お話しした通りです。
戦法STSにおける鉄砲玉ことユージ・レルレ・カワグチ氏の起用に際し、決め手となった音楽性や人柄、キャラクターの面などお答えいただければ幸いです。
まず、彼は若いのですが、好きな音楽が非常に古風ですね。
毎回毎回、毎日Tシャツを着てくるんですが、キングクリムゾン、レッドツェッペリン、ピンクフロイド……は無かったか、なんかねそういう60年代後半の音楽が好きらしく、その辺の感受性を持っている人間で、実はヒラサワのルーツをたどっていくと「行き当たるところに非常に接近している」という意味で、「こここうね」って言ったときに簡単に伝わりやすいっていうところもあるし、それからやっぱり、何て言うか……簡単、「性格が簡単」みたいな。「いいかげん」ていう意味じゃないですよ。シンプルなので、とても良いと思いましたね。ま、そういう意味で。
それと、やっぱり若干30代にして単身外国に行っていきなり路上でやってしまうと。
これをして私は「鉄砲玉」と言っているんですけれども、ま、そのような勢いのある人間であるにもかかわらず、非常に謙虚であるというところが決め手になりました。
もちろん音楽性は先にお話ししたように、まずツーカーの部分があるということですね。
そういうことです。
バトルズのどういったところがお好きですか? 平沢さんの言葉で感想を。
さっき言ったように「何もかも新しい」という感じがしますね。
しかも何が新しいって、ああいうデジタル音源を使いながら、元がギタリストなんですよ。
つまりずーっとテクノが生まれてから現在に至るまでの間に、ほとんどがキーボード奏者の作品だったんですね。
私もギターから発想するものというがなくて、やっぱりキーボードから発想してくるっていう曲作りをずっとやってきたわけです。
打ち込み系の人つーか……ま、そういうデジタルを重視するアーティストの中で、ありそうでなかった「ギタリスト側からのアプローチ」という感じがします。
その際に、使われている音源が
で、ギターからのアプローチでありながら、ギターを舐めてますね。完全に。
ま、これは私の感想ですよ。本人何て言うかわかりませんけれども。
つまり、右手がふさがっているのでこっち(左)はハンマリングだけで音を出すと。
しかもどうでもいいような場所で、わざと外したような音をピーンピーンと出している。
ということですね。
ということで時間が来てしまいました。
なんかもうちょっと、じゃあもう一個だけ言おうか。
会人や黒覆面をしたレルレ氏のような人間の顔でない、顔を晒していない人物がパフォーマンスをする効果についてどうお考えですか。
はい。これを最後の質問で終わりにします。
まず顔が見えていない、表情が見えていないということは、観客の、見る人の中にあるものが投影されやすいということですよね。
だから、例えばあれは怒っているとか泣いているとか、あるいは顔を見てどういう人間かというのを人はある程度判断できる能力がありますけれども、そういうのを全部遮断されてしまったときに、人はもう自分の中にあるものをその人に、その物体に投影するしかないんですよね。
その、人が自分の中にあるものを投影していくという状態が、音楽の成り立ちと力関係が非常に近いんですね。
つまり音楽が出てくるところというのは、人が投影すべきものを「どうぞ投影してください」あるいは「あなたが投影したいのはこれじゃないですか」というふうにして成り立つ。少なくとも私の音楽はそう成り立つべきと考えていますから、私以外、
ということで時間が来てしまいましたので、今回のBack Space Passはこれで終了といたします。
今回は放送事故もなく……ま事前にありましたけどね、無事に終わることができ、よろしかったんではないでしょうか。
それではみなさん長々とありがとうございました。
これにてサヨナラ。
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